(88)難波江の 葦のかりねの ひとよゆゑ

百人一首88番歌

難波江の
葦のかりねの
一夜ゆゑ
みをつくしてや
恋わたるべき

 

「千載集」恋3-807
「摂政右大臣の時の歌合に旅宿逢恋といへる心をよめる」

 

by 皇嘉門院別当
生没年未詳
源俊隆の娘
崇徳帝の后・皇嘉門院聖子の女官長

 

難波江の葦の刈り根のように短い仮寝の一夜のために、この身をつくして恋し続ける定めなのでしょうか。

 

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かけている言葉

葦の刈り根=仮寝

ひと夜=一節(ひとよ)

 

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摂政=藤原兼実
藤原忠通の息子

皇嘉門院=崇徳帝の后・聖子
藤原忠通の娘

聖子皇后は兼実の異母姉

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88番歌は、兼実邸で歌合があり、皇嘉門院の女房たちも加わり「旅宿で契った恋」という題で詠んだ歌。

 

女別当は、
源氏物語で、住吉詣での時に難波江に宿ることがあることから、
かつての海辺の宿、あるいはどこかでの一夜が連想されたのかもしれないと、田辺聖子さんが書いています。

 

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「難波」「澪標(みおつくし)」から、かつての栄枯盛衰や身を滅ぼす意を含み、崇徳院の悲劇が連想されるという人もいます。

皇嘉門院別当が仕えた皇嘉門院聖子を皇后とした崇徳院(第75代帝)の歌は、百人一首77番歌です。

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