2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

(71)夕されば 門田の稲葉 おとづれて

百人一首71番歌 夕されば 門田(かどた)の稲葉 おとづれて 葦のまろやに 秋風ぞ吹く 「金葉集」秋173 by 大納言経信 (源経信、つねのぶ) 1016~1097 宇多源氏の公卿 74番歌俊頼の父 85番歌俊恵法師の祖父 夕されば=夕方になると 葦のまろや=葦葺の粗末な…

(70)寂しさに 宿を立ち出でて 眺むれば

百人一首70番歌 寂しさに 宿を立ち出でて 眺むれば いづこも同じ 秋の夕暮 「後拾遺集」秋上333 by 良暹法師(りょうぜんほうし) 生年不詳~1064年頃? 「宿」は旅館ではなく自宅、庵のことです。 良暹法師は、大原や雲林院にも住んでいたようです。 俗世を避け…

(69)嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は

百人一首69番歌 嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 竜田の川の 錦なりけり 「後拾遺集」秋下366 (永承4年内裏歌合によめる) by 能因法師 (橘永愷たちばなのながやす) 988~1050頃 橘氏の末裔 後冷泉天皇の時代、永承4年(1049年)11月9日に宮中で催された歌合…

(68)心にも あらで憂き世に ながらへば

百人一首68番歌 心にも あらで憂き世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな 「後拾遺集」雑1-860 by 三条院 976~1017 冷泉天皇の第2皇子 1011年に即位 1016年に後一条天皇に譲位 心ならずも、この辛い世に生きながらえてしまったならば、きっとこの夜更け…

(67)春の夜の 夢ばかりなる 手枕に

百人一首67番歌 春の夜の 夢ばかりなる 手枕(たまくら)に かひなく立たむ 名こそ惜しけれ 「千載集」雑上964 by 周防内侍 生年不詳~1108年頃 桓武平氏高棟流、平棟仲の娘 短い春の夜の夢のような、しばしのまどろみに貴方の手枕をお借りして、そのために浮…

(66)もろともに あはれと思へ 山ざくら

百人一首66番歌 もろともに あはれと思へ 山ざくら 花よりほかに 知る人もなし 「金葉集」雑上521 (大峰に思ひもかけず桜の咲きたりけるを見て) by 大僧正行尊 1055~1135 三条天皇の曾孫 小一条院敦明親王の孫 源基平の息子 もろともに慈しみ合おう山桜よ …

番外メモ 源氏の始祖たち

番外メモ 源氏の始祖たち 65番歌作者相模の父・清和源氏・源頼光は摂津源氏の始祖です。 百人一首1番歌、飛鳥時代の天智天皇の歌に始まり、時は流れて 紫式部や清少納言が活躍した後の貴族の恋の歌などが続いた後、65番歌に清和源氏の娘相模が登場しました。…

(65)恨み侘び ほさぬ袖だに あるものを

百人一首65番歌 恨み侘び ほさぬ袖だに あるものを 恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ 「後拾遺集」恋4-815 (永承6年内裏歌合に) by 相模 995~1061 清和源氏源頼光の娘(または養女) 恨む気力もなくなって 涙で乾くひまもない袖だけでも惜しいのに その上に、恋…

(64)朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに

百人一首64番歌 朝ぼらけ 宇治の川霧 絶えだえに あらはれ渡る 瀬々の網代木 「千載集」冬419 by 権中納言定頼(さだより) 995~1045 公任(55番歌)の長男 夜明け方、立ちこめていた宇治川の霧がとぎれて、霧のたえまたえまに現れる、川瀬の網代木よ。 ⌒*:゚⌒*:゚⌒…

(63)今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを

百人一首63番歌 今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで 言ふよしもがな 「後拾遺集」恋3-750 by 左京大夫道雅(藤原道雅) 993~1054 関白藤原道隆の孫 内大臣伊周の息子 今となってはもう、貴方への思いを諦めようということだけを、人づてではなく…

(62)夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも

百人一首62番歌 夜をこめて 鳥のそら音(ね)は はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ 「後拾遺集」巻16雑上939 by 清少納言 966?~1027? 36番歌・清原深養父の曾孫 42番歌・清原元輔の娘 「枕草子」著者 一条天皇皇后定子の女房 まだ夜が明けないうちに、 (孟嘗君…

(61)いにしへの奈良の都の八重ざくら

百人一首61番歌 いにしへの 奈良の都の 八重ざくら 今日九重(ここのえ)に 匂ひぬるかな 「詞花集」春29 by 伊勢大輔(いせのたいふ) 生没年未詳 大中臣能宣(49番歌)の孫 中宮彰子の女房 紫式部の後輩 大中臣氏は代々伊勢の祭主で、父輔親が神祇官の大輔だったた…

(60)大江山 生野の道の 遠ければ

百人一首60番歌 大江山 生野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立 「金葉集」雑上550 by 小式部内侍(こしきぶのないし) 生年不詳~1025 和泉式部(56番歌)の娘 父は和泉式部の最初の夫、橘道貞 中宮彰子に仕えた 母の居る丹後までは、大江山を越え生野を通…

(59)やすらはで 寝なましものを 小夜更けて

百人一首59番歌 やすらはで 寝なましものを 小夜更けて かたぶくまでの 月を見しかな 「後拾遺集」恋2-680 by 赤染衛門(あかぞめえもん) 958年頃~没年未詳 大江匡衡(おおえのまさひら)の妻 曾孫は73番歌・大江匡房 中宮彰子に仕えた あなたが来ないとわかって…

(58)有馬山 いなのささ原 風吹けば

百人一首58番歌 有馬山 いなの篠原(ささはら) 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする 「後拾遺集」恋2-709 by 大弐三位(だいにのさんみ) 999年頃生まれ~没年未詳 紫式部(57番歌)の娘賢子 中宮彰子に仕えた 「後拾遺集」の詞書 「離れ離れ(かれがれ)なる男の、…

(57)めぐり逢ひて 見しやそれとも 分かぬまに

百人一首57番歌 めぐり逢ひて 見しやそれとも 分かぬまに 雲隠れにし 夜半(よは)の月かな 「新古今集」雑上1497 by 紫式部 生没年不詳 藤原為時の娘。 「源氏物語」「紫式部日記」作者 中宮彰子の女房の一人 久し振りにめぐり逢い、間違いなくその人なのかと見分け…

(56)あらざらむ この世のほかの 思ひ出に

百人一首56番歌 あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな 「後拾遺集」恋3-763 by 和泉式部 970年代~不詳 越前守大江雅致(まさむね)の娘 中宮彰子の女房の一人 60番歌小式部内侍の母 あらざらむ(=死にそうな私が)この世のほか(=あ…

(55)滝の音は たえて久しく なりぬれど

百人一首55番歌 滝の音は たえて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ 「千載集」雑上1035 (「拾遺集」雑上449:滝の糸) by 大納言公任(きんとう) 966~1041(76歳) 関白太政大臣頼忠の息子 64番歌定頼の父 水が枯れて滝の音が絶えて久しいですが、…

(54)忘れじの 行く末までは かたければ

百人一首54番歌 忘れじの 行く末までは かたければ 今日を限りの 命ともがな 「新古今和歌集」恋3-1149 by 儀同三司母 高階貴子 (たかしなのきし、たかこ) 生年不詳~996年 藤原道隆の妻 一条天皇后定子の母 忘れないと仰いますが、これから遠い先までずっと…