百人一首

(60)大江山 生野の道の 遠ければ

百人一首60番歌 大江山 生野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立 「金葉集」雑上550 by 小式部内侍(こしきぶのないし) 生年不詳~1025 和泉式部(56番歌)の娘 父は和泉式部の最初の夫、橘道貞 中宮彰子に仕えた 母の居る丹後までは、大江山を越え生野を通…

(59)やすらはで 寝なましものを 小夜更けて

百人一首59番歌 やすらはで 寝なましものを 小夜更けて かたぶくまでの 月を見しかな 「後拾遺集」恋2-680 by 赤染衛門(あかぞめえもん) 958年頃~没年未詳 大江匡衡(おおえのまさひら)の妻 曾孫は73番歌・大江匡房 中宮彰子に仕えた あなたが来ないとわかって…

(58)有馬山 いなのささ原 風吹けば

百人一首58番歌 有馬山 いなの篠原(ささはら) 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする 「後拾遺集」恋2-709 by 大弐三位(だいにのさんみ) 999年頃生まれ~没年未詳 紫式部(57番歌)の娘賢子 中宮彰子に仕えた 「後拾遺集」の詞書 「離れ離れ(かれがれ)なる男の、…

(57)めぐり逢ひて 見しやそれとも 分かぬまに

百人一首57番歌 めぐり逢ひて 見しやそれとも 分かぬまに 雲隠れにし 夜半(よは)の月かな 「新古今集」雑上1497 by 紫式部 生没年不詳 藤原為時の娘。 「源氏物語」「紫式部日記」作者 中宮彰子の女房の一人 久し振りにめぐり逢い、間違いなくその人なのかと見分け…

(56)あらざらむ この世のほかの 思ひ出に

百人一首56番歌 あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな 「後拾遺集」恋3-763 by 和泉式部 970年代~不詳 越前守大江雅致(まさむね)の娘 中宮彰子の女房の一人 60番歌小式部内侍の母 あらざらむ(=死にそうな私が)この世のほか(=あ…

(55)滝の音は たえて久しく なりぬれど

百人一首55番歌 滝の音は たえて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ 「千載集」雑上1035 (「拾遺集」雑上449:滝の糸) by 大納言公任(きんとう) 966~1041(76歳) 関白太政大臣頼忠の息子 64番歌定頼の父 水が枯れて滝の音が絶えて久しいですが、…

(54)忘れじの 行く末までは かたければ

百人一首54番歌 忘れじの 行く末までは かたければ 今日を限りの 命ともがな 「新古今和歌集」恋3-1149 by 儀同三司母 高階貴子 (たかしなのきし、たかこ) 生年不詳~996年 藤原道隆の妻 一条天皇后定子の母 忘れないと仰いますが、これから遠い先までずっと…

(53)嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くる間は

百人一首53番歌 嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くる間は いかに久しき ものとかは知る 「拾遺集」恋4-912 by 右大将道綱母 937頃~995頃 「蜻蛉日記」の作者 18歳位頃に藤原兼家と結婚して翌年道綱を出産。 嘆きながら1人寝する夜、夜明けまでがどんなに長く辛いこ…

(52)明けぬれば 暮るるものとは 知りながら

百人一首52番歌 明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほうらめしき 朝ぼらけかな 「後拾遺集」恋2-672 by 藤原道信朝臣 972~994(23歳) 夜が明ければやがて日が暮れてまた逢えると知っていますが、それでもなお恨めしいのは去らなければならない明け方に…

(51)・・その②

百人一首51番歌・・その② 藤原実方は、父・定時が早世したため、叔父の大納言・藤原済時(なりとき)の養子となりました。 天延元年(973年)叙爵。左近少将、左近中将等の武官を歴任しています。 長徳元年(995年)正月、陸奥守に任じられました。 同年3月…

(51)かくとだに えやはいぶきの さしも草・・その①

百人一首51番歌 かくとだに えやは伊吹の さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを 「後拾遺集」巻1恋612 詞書「女に初めてつかわしける」 by 藤原実方 生年不詳~999(40歳位) 「こんなに貴方を思っています」とさえ言えないのですから、ましてや伊吹山のヨモギ(…

(50)君がため 惜しからざりし 命さへ

百人一首50番歌 君がため 惜しからざりし 命さえ 長くもがなと 思ひけるかな 「後拾遺集」2-恋669 詞書(女のもとより帰りてつかはしける) by 藤原義孝 954~974 45番歌作者藤原伊尹の息子 藤原行成の父 貴方のためなら惜しくないと思っていた命ですが、今は…

(49)みかきもり 衛士のたく火の 夜は燃え

百人一首49番歌 御垣守(みかきもり) 衛士のたく火の 夜は燃え 昼は消えつつ 物をこそ思へ 「詞花集」7-225 by 大中臣能宣(よしのぶ)朝臣 921~991 梨壺の5人の1人 36歌仙の1人 伊勢神宮の祭主 宮中の門を守る衛士が焚く火が、夜は燃え昼は消えているように、恋…

(48)風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ

百人一首48番歌 風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ くだけて物を 思ふころかな 「詞花集」(しかしゅう)7-恋211 by 源 重之(みなもとのしげゆき) 生没年不詳(~1000頃) 清和天皇の曽孫 36歌仙の1人 強い風に吹かれた波がうちつけた岩はもとのまま、波だけが…

(47)八重葎 しげれる宿の さびしきに

百人一首47番歌 八重葎(むぐら) しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり 「拾遺集」秋140 by 恵慶法師(えぎょうほうし) 生没年不詳、出自不詳 葎が幾重にもなって繁っている淋しい家に人は訪ねて来ないけれど、季節が移り秋は訪れてきたのですね…

(46)由良の門を 渡る舟人 梶を絶え

百人一首46番歌 由良の門(と)を 渡る舟人 梶を絶え 行方も知らぬ 恋の道かな 「新古今集」恋1-1071 by 曽祢好忠(そねのよしただ) 生没年不詳(または、923~1003) 曽丹(そたん、丹後の判官だったから) 由良の瀬戸を渡る船人が梶をなくして、あてどなく漂…

藤原氏系図 百人一首後半

後半の百人一首は、藤原冬嗣の北家から、沢山選出されています。 1sheetに書くために、良房からは縦書き、良門からは横書きになりました。 数字は百人一首の番号です。 スマホでは見ずらいですが・・

藤原氏系図 百人一首

鎌足 │ 不比等 │ ┬────┬───────┬──────┬ 麻呂 宇合 房前 武智麻呂 (京家) (式家) (北家) (南家) ∨ ∨ ∨ ∨ ∨ 仲成(薬子の変) ∨ 敏行=18番歌 ∨ 興風=34番歌 房前 │ ┬────┬─────┬─────┬───── 永手 真楯 魚名 楓麻呂 │ │ 内麻呂 藤成 │ │ 冬嗣 秀郷 ∨ (奥州…

(45)あはれとも 言ふべき人は 思ほえで

百人一首45番歌 あはれとも 言ふべき人は 思ほえで 身のいたづらに なりぬべきかな 「拾遺集」恋5-950 by 謙徳公 藤原伊尹(これまさ、これただ)の諡 924~972 26番歌・藤原忠平の孫 50番歌・藤原義孝の父 哀れだと言ってくれる人は誰一人として思い浮かばず…

(44)逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに

百人一首44番歌 逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし 「拾遺集」恋1-679 by 中納言朝忠(藤原朝忠) 910~966 36歌仙のひとり 25番歌作者・三条右大臣(藤原定方)の5男 土御門(つちみかど)中納言 逢うことが全くなかったなら、かえ…

番外メモ 冷泉家

番外メモ 冷泉家 百人一首の選者、藤原定家の子孫は、今は上冷泉家と下冷泉家に継がれています。 冷泉家は、歌道宗匠家として 冷泉流歌道や宮廷生活の伝統的諸行事を今も伝承しています。 1981年(昭和56年) 上冷泉家の冷泉布美子さん(1916~2011)(上冷…

(43)逢ひ見ての 後の心に くらぶれば

百人一首43番歌 逢ひ見ての 後(のち)の心に くらぶれば 昔は物を 思はざりけり 「拾遺集」恋2-710 by 権中納言敦忠(藤原敦忠) 906~943 左大臣藤原時平の三男 母は在原業平の孫 36歌仙の一人 お逢いして契りを結んだ後のこの恋しい心に比べれば、契りを結…

(42)契りきな かたみに袖を 絞りつつ

百人一首42番歌 契(ちぎ)りきな かたみに袖を 絞りつつ 末の松山 浪(なみ)越さじとは 「後拾遺集」恋4-770 by 清原元輔 908~990 清少納言の父 36番歌・深養父(ふかやぶ)の孫 36歌仙の一人 「後撰集」撰者の一人 約束しましたよね、涙に濡れた袖を絞り合いながら…

(41)恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり

百人一首41番歌 恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか 「拾遺集」恋1-621 by 壬生忠見(みぶのただみ) 生没年不詳 30番歌・壬生忠岑の子 恋してるという私の噂は、早くも世間に立ってしまいました。人に知られないようにひそかに思…

番外メモ 天徳内裏歌合

番外メモ 天徳内裏歌合 (てんとくだいりうたあわせ)= 天暦御時歌合 (てんりゃくおんときうたあわせ) 右チーム、左チームに分かれて、歌を詠む方人(かたうど)、自分方の歌を褒めたり相手方の歌を批判したりする念人など、一首ごとに勝負をする歌合。 9…

(40)忍ぶれど 色に出でにけり 我が恋は

百人一首40番歌 忍ぶれど 色に出(い)でにけり 我が恋は 物や思ふと 人の問ふまで 「拾遺集」恋-622 by 平 兼盛 生年未詳~990年 光孝平氏 光孝天皇の曾孫(または玄孫) 駿河守(するがのかみ) 36歌仙の一人 心に秘めて忍んできたけれど、とうとう顔色に出てし…

(39)浅茅生の 小野の篠原 忍ぶれど

百人一首39番歌 浅茅生(あさぢふ)の 小野の篠原 忍ぶれど あまりてなどか 人の恋しき 「後撰集」巻9・恋577 by 参議等(源等、みなもとのひとし) 880~951 嵯峨天皇の曾孫。 嵯峨源氏 浅茅(あさぢ、あさじ)=チガヤ、草の名前 小野=野原 篠=細かい竹 浅…

番外メモ 百人一首の大輔

或る日、縁あって、蓮の台(はちすのうてな)を検索したら、和歌がヒットしました。 暁の はちすのうてな いろいろに しみまさるなる 糸たけの声 作者は、「大輔」のようです。 ・・百人一首38番歌の作者・右近が仕えた穏子皇后の息子(保明親王)の恋人も大輔…

(38)忘らるる 身をば思はず 誓いてし

百人一首38番歌 忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな 「拾遺集」巻14・恋4・870 by 右近 生没年未詳 右近少将季縄(すえなわ)の娘 忘れられる私の身のことは何とも思いません。忘れないと神に誓ったのに誓いを破った罰を受けて奪われて…

(37)白露に 風の吹きしく 秋の野は

百人一首37番歌 白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける 「後撰集」秋中308 by 文屋朝康(ふんやのあさやす) 生没年未詳 六歌仙の一人 22番歌の作者・文屋康秀の子 草葉の白露に風がしきりに吹きつける秋の野は、まるで、貫き通した緒がほ…