百人一首

(36)夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを

百人一首36番歌 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ 古今集巻3・夏・166 by 清原深養父(きよはらのふかやぶ) 生没年未詳 42番歌人・清原元輔の祖父 62番歌人・清少納言の曾祖父 古今集の詞書 「月のおもしろかりける夜、あかつきが…

(35)人はいさ 心も知らず 古里は

百人一首35番歌 人はいさ 心も知らず 古里は 花ぞ昔の 香ににほひける 古今集・春上42 by 紀貫之 868頃~945 36歌仙の一人 古今集撰者の一人 古今集仮名序を書いた人 「土佐日記」の著者 人の心はさあどうでしょうね、判りません。けれど昔なじみのこの里では…

番外メモ 能「高砂」と和歌

「高砂」は、 室町時代の 世阿弥の能「高砂や~・・」が有名です。 能「高砂」は、古くは「相生(あいおい)」や「相生松」と呼ばれたそうです。 世阿弥は、 「古今集」仮名序にある一節 「高砂、住の江の松も、相生のように覚え」を題材として「高砂」を作り出したそう…

(34)誰をかも 知る人にせむ 高砂の

百人一首34番歌 誰をかも 知る人にせむ 高砂(たかさご)の 松も昔の 友ならなくに 古今集・巻17・雑上909 by 藤原興風(おきかぜ) 生没年不詳 36歌仙の一人 いったい誰を親しい友としたらよいのだろうか。高砂の松でさえ、昔からの友ではないのに。 (年老い…

(33)久方の光のどけき春の日に

百人一首33番歌 久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ 古今集・春下84 久方の=天空に関する語の枕詞 しづ心=静かで落ち着いた心 のどかな春の陽がさす日に どうしてこうも心あわただしく桜は散っているのだろう 百人一首の中で 6つある桜の…

(32)山川に 風のかけたる しがらみは

百人一首32番歌 山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり 古今集・秋下303 詞書「志賀の山越えにてよめる」 志賀越道=京都と滋賀の境の山道 山川=やまがわ=山中を流れる川 しがらみ=柵 by 春道列樹(はるみちのつらき) 生年未詳~920 …

(31)朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに

百人一首31番歌 朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪 古今集・冬332 詞書「大和国にまかれりける時に雪の降りけるを見てよめる」 「吉野の里」は大和国の枕詞 by 坂上是則(さかのうえのこれのり) 生没年未詳 坂上田村麻呂の末裔 36歌仙の一…

(30)有明の つれなく見えし 別れより

百人一首30番歌 有明の つれなく見えし 別れより 暁(あかつき)ばかり 憂きものはなし 古今集・恋歌3・625 by 壬生忠岑(みぶのただみね) 生没年未詳 41番歌の作者・壬生忠見の父 有明の月がそっけない顔をして出ている時に冷たくされて別れて以来、暁ほど辛…

(29)心あてに 折らばや折らむ 初霜の

百人一首29番歌 心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどわせる 白菊の花 古今集・秋下277 by 凡河内躬恒 (おおしこうちのみつね) 生没年未詳 「古今集」の選者4人の中の一人 36歌仙の一人 あてずっぽうに、もし折るならば折ってみようか。 初霜が降りた中…

(28)山里は 冬ぞ寂しさ まさりける

百人一首28番歌 山里は 冬ぞ寂しさ まさりける 人目も草も 枯れぬと思へば 古今集・巻6・冬315 by 源宗于(みなもとのむねゆき) 生年未詳~939 光孝天皇の孫 父・是忠親王により臣籍降下 36歌仙の一人 源宗于は、天皇の孫でありながら、官位に恵まれず正四…

(27)みかの原 わきて流るるいづみ川

百人一首27番歌 みかの原 わきて流るる いづみ川 いつ見きとてか 恋しかるらん 新古今集・恋1996 by 中納言兼輔(藤原兼輔) 877~933 36歌仙のひとり 紫式部の曾祖父(祖父の父) 藤原北家 瓶原(みかの原)を分けて湧いて流れる泉川、その川の名のように「いつみ」…

(26)小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば

百人一首26番歌 小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ 拾遺集・雑秋・1128 by 貞信公=藤原忠平 880~949 藤原道長の曾祖父 小倉山の峰のもみじ葉、もし心があるならば、もう一度天皇がおいでになるその日まで、どうか美しいまま散らな…

(25)名にし負はば 逢坂山の さねかずら

百人一首25番歌 名にし負はば 逢坂山のさねかずら 人に知られで くるよしもがな 後撰集・恋3・700 by 三条右大臣=藤原定方 873~932 紫式部の曾祖父(祖母の父) 醍醐天皇の外叔父 「逢坂山のさねかずら」(逢って寝る)という名にあやかって、葛(かづら)のつる…

(24)このたびは 幣もとりあえず手向山

百人一首24番歌 このたびは 幣(ぬさ)も取りあえず 手向山(たむけやま) 紅葉の錦 神のまにまに 古今集・巻9・羈旅(きりょ)420 by 菅家(かんけ)=菅原道真 845~903 この度は、急な旅で幣の準備もできませんでした。この錦のように美しい紅葉を幣として旅の安…

(23)月見れば 千々に物こそ悲しけれ

百人一首23番歌 月見れば 千々に 物こそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど 「古今集」巻4・秋歌上193 by 大江千里(おおえのちさと) 生没年不詳 宇多天皇の時代の人。 在原業平、行平の甥という説があります。 伊予国(愛媛県)の権守(ごんのかみ)…

(22)吹くからに 秋の草木のしをるれば

百人一首22番歌 吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ 古今集 巻5・秋歌下249 by 文屋康秀(ふんやのやすひで) 6歌仙のひとり 37番歌の文屋朝康の父 吹くと同時に秋の草木も萎れ(しおれ)てしまう、なるほど、それで山から吹く風を荒ら…

(21)今来むと 言ひしばかりに長月の

百人一首21番歌 今来むと 言ひしばかりに 長月(ながつき)の 有明(ありあけ)の月を 待ち出でつるかな 古今集、巻14・恋歌4・691 by 素性法師(そせいほうし) 平安前期、生没年未詳 12番歌「天つ風・・」の作者・遍昭の子 桓武天皇の曾孫 今すぐに行きますよ、…

(20)わびぬれば 今はた同じ難波なる

百人一首20番歌 わびぬれば 今はた同じ 難波(なには)なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ 「後撰集」恋・961 by 元良(もとよし)親王 陽成天皇の第1皇子 (890~943) 「後撰集」の詞書によると、 宇多天皇(上皇、または法皇)の女御「京極御息所(みやすどころ)」と…

(19)難波潟 短き葦のふしの間も

百人一首19番歌 難波潟(なにはがた) 短き葦の ふしの間も 逢はでこのよを 過ぐしてよとや by 伊勢 870頃~939頃 難波潟に生えている葦の節と節の間のようなほんの僅かな時間でさえ逢わないまま、一生過ごせとあなたは言うのでしょうか。 作者・伊勢 伊勢守…

(18)住の江の 岸による波よるさへや

百人一首18番歌 住の江の 岸による波 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ 「古今集・恋2・559」 by 藤原敏行朝臣 (ふじわらのとしゆきあそん) 生年未詳~901(?) 住の江の岸によせる波のように、昼だけでなく夜までも。あなたは夜の夢の中の通い路でさえ人目…

(17)ちはやぶる 神代も聞かず龍田川

百人一首17番歌 ちはやぶる 神代(かみよ)も聞かず 龍田川 からくれなるに 水くくるとは 「古今集 秋下・294」 by 在原業平朝臣 (ありわらのなりひらあそん) 818~893 16番歌の作者・行平の弟 平城天皇の孫 神代の頃でさえ聞いたことが無い。 龍田川が紅葉…

(16)たち別れ いなばの山の峰に生ふる

百人一首16番歌 立ち別れ いなばの山の峰に生(お)ふる まつとし聞かば 今帰り来む by 中納言行平 (在原行平 ありわらのゆきひら) 818~893 平城天皇(へいぜいてんのう)の孫 在原業平の兄 お別れですが、 因幡山の峰に生えている松のように、あなたが私の…

(15)君がため 春の野に出でて 若菜つむ

百人一首15番歌 君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪は降りつつ by 光孝天皇 830~887(在位884~887) 平安前期第58代天皇 仁明天皇の第3皇子 先代は、百人一首13番歌の陽成天皇です。 (13)でも書きましたが、 清和天皇の第1皇子の陽成天皇は…

(14)陸奥の しのぶもぢずり たれゆえに

百人一首14番歌 陸奥の(みちのくの) しのぶもぢずり たれゆえに 乱れそめにし 我ならなくに by 河原左大臣(かわらのさだいじん) 嵯峨天皇の12番目の皇子 源融(みなもとのとおる) 822~895 平安時代初期 源融は、「源氏物語」の主人公「光源氏」のモデルの…

(13)筑波嶺の 峰より落つる みなの川

百人一首13番歌 筑波嶺の(つくばねの) 峰より落つる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる by 陽成院 第57代天皇(在位876~884) 868~949 峰=山頂 淵=水がよどんで深い所 筑波山の山頂から流れ始める みなの川が、 最初は細い流れからやがて深い淵にな…

(12)天つ風 雲の通い路 吹き閉じよ

百人一首12番歌は、桓武天皇の孫・良岑宗貞(のちの僧正遍昭)が若き官人時代に新嘗祭のときの舞をみて詠んだ歌だそうです。 百人一首12番歌 天つ風 雲の通い路 吹き閉じよ をとめの姿 しばしとどめぬ by 僧正遍昭 そうじょうへんじょう 816~890 桓武天皇の…

(11)わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと

百人一首11番歌 わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ 海人の釣舟 わたのはら やそしまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ あまのつりぶね by 参議 篁 さんぎ たかむら=小野篁 (802~852年) わたの原=広い海 八十島=沢山の島々 海人=漁師…

(10)これやこの 行くも帰るも 別れては

百人一首10番歌 これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関 by 蝉丸(せみまる) 詳細不明 平安時代前期の人 百人一首8~39番=平安時代前期の歌 これがあの、 京から東国へと旅立つ人も それを見送って京へ帰る人も ここで別れ、 知ってる…

(9)花の色は うつりにけりな いたづらに

百人一首九番歌 花の色はうつりにけりな いたづらに わが身 世にふる ながめせしまに 小野小町 生没年不詳(800年代前期~中期) 仁明・文徳(もんとく)朝に活躍したともいわれます。 美人さんを〇〇小町と言ったりしますので、美しい人だったのでしょうね…

(8)わが庵は 都のたつみ しかぞ住む

百人一首8番歌 わが庵は 都のたつみ しかぞ住む 世をうぢ山と 人はいふなり by 喜撰法師 (生没年不明、平安初期頃) 都の辰巳=宇治 しかぞ=そのように 私の庵は、都の東南にあり、ここでこの様に心安らかに暮らしています。 世間の人々は、この世を憂いて…